認知症の初期症状:その わがままは性格ではない

認知症の初期症状として、よく見過ごされがちなのが、行動や性格の変化です。「わがまま」と捉えられがちな行動も、実は認知症の兆候の一つかもしれません。これまで協調的で柔軟だった人が、急に自己中心的な振る舞いを見せたり、些細なことで怒りやすくなったりすることがあります。これらの変化は、単に性格の問題として片付けられるべきではなく、脳の機能変化が引き起こしている可能性があります。今回は性格の変化に焦点をあて、書いて行きます。認知症の早期発見につながれば幸いです。

1.こんな行動、言動は認知症かも

認知症の初期段階では、多くの場合、軽微な記憶障害や判断力の低下が見られますが、それだけではありません。行動や言動の変化も認知症の重要な初期兆候です。

・急な性格の変化

これまで協調的であった人が、突然、自己中心的な振る舞いをするようになることがあります。自分の欲求を優先し、他人の意見や感情を顧みなくなることも、「わがまま」と捉えられがちな行動の一つです。

・理由なき怒りやイライラ

些細なことで怒ったり、イライラしたりする頻度が増えることも、認知症の初期症状の一つです。これは、状況を正しく理解する能力が低下しているために起こることがあります。

・判断力の欠如

日常的な判断が難しくなり、不適切な行動を取ることが増えます。例えば、季節に合わない服装をする、金銭の管理ができないなど、以前は容易にできていたことが困難になります。

・社交的な撤退

友人や家族との交流を避け、孤立を好むようになることがあります。これは、コミュニケーションの難しさや自己表現の困難さが原因でおこる場合があります。

2.「わがまま」になる脳のメカニズム

認知症における「わがまま」な行動は、単に個人の性格の問題ではなく、脳内の変化によるものです。この背後にあるメカニズムを理解することは、認知症患者への対応方法を考える上で重要です。

・前頭葉の機能低下

「わがまま」な行動は、特に前頭葉の損傷と関連が深いとされています。前頭葉は、計画立案、問題解決、衝動制御、社会的行動の調節など、複雑な認知機能を司っています。この部分が認知症で影響を受けると、自己中心的な振る舞いや、他人の感情を考慮する能力の低下が見られることがあります。

・感情調整の問題

脳の感情を司る部分、特に扁桃体の機能障害も、「わがまま」な行動に寄与することがあります。扁桃体は感情反応や感情の調整に重要な役割を果たしており、この部位の障害は、不適切な怒りやイライラといった感情の表出を引き起こすことがあります。

・社会的認知の障害

認知症は社会的認知の障害も引き起こします。これは、他人の視点を理解したり、社会的な手がかりを読み取る能力が低下することを意味します。結果として、他人に配慮することが難しくなり、「わがまま」と捉えられる行動へと繋がることがあります。

・総合的な脳機能の低下

認知症では、これらの脳領域だけでなく、脳全体の機能が徐々に低下します。記憶力、注意力、言語能力などの基本的な認知機能の低下も、適切な社会的行動を取る上での障害となり得ます。

3.もともと「わがまま」な性格VS認知症の症状

見分けるポイントをお伝えします。

・性格における一貫性

もともとの性格は、一生を通じて比較的一貫性があります。もし個人が長年にわたって「わがまま」とされる行動を示している場合、それはその人の性格の一部とみなすことができます。しかし、突然、性格に大きな変化が現れた場合、それは認知症や他の神経系の疾患が原因である可能性があります。

・行動の変化と発生時期

認知症による「わがまま」な行動は、通常、人生の後半期に現れることが多く、それまでに示したことのない新たな振る舞いが見られることが特徴です。突然の性格変化や、日常生活の中での新しい課題への適応困難が見られる場合、認知症の可能性を疑うべきです。

・認知機能の他の兆候

認知症は、「わがまま」な行動だけではなく、記憶障害、言語能力の低下、判断力の欠如など、他の認知機能の低下を伴います。これらの症状が同時に見られる場合は、認知症を疑う重要な指標となります。

・対人関係の影響

もともと「わがまま」な性格の人は、その性格を理解し受け入れる周囲の人との関係を築いていることがほとんどです。一方で、認知症による行動変化は、家族や友人との間に摩擦や理解しがたい誤解を生じさせることがあります。

4.「わがまま」は放置せず、専門家へ相談

介護を受ける方が時に「わがまま」と見える行動を取ることがあります。しかし、これらの行動は、実はその方なりのコミュニケーションの試みであったり、何かしらの不満やストレスの表れである場合も多いです。ただ放置してしまうと、問題は解決せず、さらに大きなトラブルへと発展することも。そこで、専門家への相談が推奨されます。熊本市西区にある『花もめん』では、このような場面にも対応している認知症対応型の施設です。

専門家への相談の重要性

介護を受ける方一人ひとりが抱える悩みや要望は多種多様です。『花もめん』では、個々のニーズを深く理解し、寄り添うことを大切にしています。また、訓練された専門家による適切な支援や介護方法の提案が可能です。場合によっては、専門的なアドバイスや治療が必要な場合もあり、そのための橋渡しも行っています。

介護の現場で顕著になりがちな「わがまま」と捉えられがちな行動でも、適切な対応を行うことで、より良いコミュニケーションが生まれ、介護を受ける方の生活の質の向上につながります。『花もめん』では、そのような専門的なサポートを通じて、介護が必要な方々とその家族が安心して暮らせるサポートを心がけています。

もし「初期症状」に悩んでいるなら、『花もめん』への相談が一つの手段です。私たちの経験と知識が、新たな解決の糸口を見つける助けとなれば幸いです。

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